告示研修とは
告示研修は、医療専門職が業務範囲を拡大するために行う研修プログラムです。研修を修了すると、医療専門職は本来の業務に加え、特定の医療行為を行うことが許可されます。
例えば、放射線技師は従来、造影CT撮影時に静脈ルートを確保することができませんでした。
静脈に針を刺す行為は医師や看護師の業務であり、放射線技師はCT装置の操作しか認められていませんでした。
業務内容拡大の背景
医療現場では、特に医師や看護師の人手不足が深刻です。これを解消するためタスクシフトという考え方、つまり他の医療専門職にも新たな業務を任せることで業務分担が進められています。ただし、業務範囲が拡大しても、それを実施するためには告示研修を修了する必要があります。
放射線技師の告示研修内容
告示研修は以下のように進められます。
- WEB研修動画(eラーニング)を約700分視聴し、設問に合格する
- 特定施設での実技講習を受講
今回は、eラーニングの700分の動画視聴を終えた内容をレポートします。
研修動画の内容
研修動画は、次のテーマに分かれて構成されています。
- 静脈路確保
- RI検査薬の注入
- 動脈路接続と装置の操作
- 下部消化管検査
- 上部消化管検査
静脈路確保
この動画では、四肢の静脈路を確保して造影剤を注入する手順が紹介されています。
- 患者対応
- リスク(アナフィラキシーや静脈炎など)
- 使用器材の紹介
- 血管の選定方法
- 穿刺手技
- CT、MRI、超音波で使用する造影剤の説明
- 自動注入器の使用法
- 造影剤の副作用
RI検査薬の注入
静脈からRI検査薬を注入するための動画です。
- RI製剤を注入手技と使用物品
- RI製剤に特性
- 副作用にリスク
- 装置の操作方法
動脈路接続と装置の操作
アンギオ(血管造影)時に動脈に接続されたカテーテルから造影剤を注入するための動画です。
- 造影剤の特徴
- 清潔操作の重要性
- アンギオ時の流れと注意点
- 装置の操作方法
下部消化管検査関連
注腸検査(大腸に造影剤を注入する検査)のために、肛門からチューブを挿入する技術を紹介しています。
- 患者対応
- 下部消化管の解剖
- チューブ挿入時の手技とリスク
上部消化管検査関連
鼻から胃にチューブを挿入して造影剤を流し込む技術に関する動画です。
- 鼻腔と上部消化管の解剖
- カテーテルを使った手技
- 検査時のリスク
告示研修修了後に放射線技師が行えること
研修を修了すると、放射線技師は以下の業務が可能になります。
- 静脈路の確保
- 造影剤注入器の操作と血管内への造影剤の注入
- 検査終了後の抜針
- RI製剤の静脈注入
- 注腸検査時のチューブ挿入と抜去
- 鼻-胃チューブを通じた造影剤の注入とチューブの抜去
ただし、採血のための静脈路確保や鼻からチューブを挿入する行為は認められていません。
感想
動画ではアレルギーやアナフィラキシーショックの危険性が強調され、繰り返し同じ内容が説明されます。
重要な部分なので納得できますが、少しくどいと感じることもありました。
現場の技師仲間の話では、現在、技師のみで造影CTを行っている施設はまだ少ないようです。これは、研修を終了している技師と終了していない技師が混在しているためや、急変時の対処ができないことが主な理由のようです。
現状では、放射線技師は危険時に薬剤を投与したり、投与のためのルートを確保することが許されていません。そのため、造影CT中にアナフィラキシーショックなどが発生した場合、技師単独での対応には限界があります。これが、技師のみでの造影CT実施していない施設が多い理由の一つです。
また、告示研修修了者と未修了者が混在する施設では業務に差が生じ、統一した業務体制の構築が求められますが、研修には時間や費用がかかるため、全員が一斉に研修を受けるのは難しい状況です。
急変時の対応には医師や看護師の迅速なサポートが必要であり、造影剤を使った検査では特に慎重な体制が求められます。そのため、現場では「告示研修を修了しても、技師単独での業務にはリスクが伴う」との声が多く聞かれます。今後も、医師や看護師との連携を大切にし、安全を最優先に考えた業務体制が望まれています。
最後に、
研修動画を視聴して改めて感じたのは、危険が起こった際に備えて、日頃から訓練を行っておくことの大切さです。緊急時には冷静かつ迅速な対応が求められるため、当該施設でも日常的にリスクを想定した訓練を積極的に行っていこうと思います。
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